推しの囲い込みでビジネス拡大へ
推しとファンの違いって?
「推し活ってよく聞くけど、ファンと推しの違いって何なの?」
そんな疑問をお持ちの方も多いでしょう。
推しとファンの違いは、簡単に言えば対象に対する想う気持ち、熱量の違いです。
さらに言えば、対象に対する自発的な行動量の違いとも言えます。
「好きな対象のためにどれだけ自分から発信したり行動しているか」
これが「推し」を持っている人と「ファン」の大きな違いです。
一つわかりやすい例を挙げて推しとファンの違いを確認しておきましょう。
ファンの例
韓国の7人組アイドルグループBTSのジミンが好きなK子さんは、BTSのジミンがテレビに映っているとつい見入ってしまい、好きな芸能人は?と聞かれると「BTSのジミン」と答えている。
推しを持っている人の例
ミンの情報をチェックしていて、コラボ商品があれば予約注文していち早く手に入れている。
また、職場の同僚にもことあるごとに、ジミンの魅力を話している。
ネイルサロンではジミンをイメージしたネイルデザインをお願いしたり、長期休暇の際には韓国に遠征して現地歌謡祭に参加している。
ファンから推しを持つ人へ移行しやすい時代
現在は、SNSをはじめとするインターネットのテクノロジーの進展により、どんな時間でもどこにいても簡単に好きな気持ちや応援する気持ちを自分から発信することができます。
X(旧Twitter)やInstagram、FacebookなどのSNSを使えば、いつでもどこでも自分の「推し」について発信できるのです。
こうした社会の変化が後押しすることもあって、好きな対象への自発的な行動量はどんどん増加していきやすく、ファンから推しを持つ人へ移行しやすい状況にあります。
自発的な行動量が増えるにつれて熱狂度も高まる
自発的な行動量の増加は、対象への熱狂度の高まりとも比例します。
熱狂度は対象に対する好きだという感情のレベルとも言えますが、好きだという感情が高まれば高まるほど、その対象に対して「何かしてあげたい」「喜んでもらいたい」といった奉仕の精神も高まります。
この好きだという感情のレベルが「いいなあ」とか「好きだなあ」といったライトなレベルなのか、あるいは「この人が喜ぶことをしてあげたい」「常にこの人のことを感じていたい」といったような強い愛情なのか、この度合が熱狂度です。
休日は推しの聖地巡礼をしたり、推しのグッズを所有して常に推しのことを考え想いを馳せる。
そして、推しの魅力についてXやInstagramで発信し、共感を得ることに大きな喜びを感じるといったように、自発的な行動量が増えれば増えるほど、熱狂度は高まります。
つまり、対象に対する自発的な行動量が増えれば増えるほど「好き」な気持ちと存在感が高まっていき、日常生活の中での重要度が高まっていくのです。
推しの対象は無限
ここ数年来、推し活がさまざまな場面でのトレンドを誘発しています。
推し活の対象は、アイドルや芸能人やYoutubeなど実在する人物をはじめ、アニメのキャラクターやYoutuber、vtuber、そのほか鉄道や航空機、バスなどの乗り物、寺社仏閣、ダムや工場など多岐に渡ります。
推しの対象は、従来からあるファン活動の対象である実在する人物やアニメなどのキャラクターだけでなく、好きで応援したいと思えるあらゆる事物が対象になりえると言えます。
こうしたことを考えると、ビジネスの場においても自社の商品やサービス、ブランドはもとより、企業理念やそこで働く社員や代表者までもが推しの対象となる可能性は十分にありえます。
ファンを「推し」のステージへ連れてくることでビジネス拡大へ
自社のビジネスに「推し」を囲い込むということは、これまでの企業活動のように商品やサービスの機能的な価値を提供することで顧客とつながるということではなく、自社のビジネスや理念を応援したいといったような感情的な価値と顧客の行動量で繋がる新しいビジネスの形態と言えます。
わかりやすい例を挙げれば、米国のアップル社やユニクロなどです。
商品やサービスの機能性が評価されているだけでなく、企業理念に対するユーザーの共感を意識し、創業者や代表者が積極的に発信するなど、いわば顔の見える経営という点で共通しています。
感情的な価値でつながる関係性は、いわゆるファンマーケティングで説明されるものと同一ですが、この関係性が構築されていれば、簡単に競合に乗り換えられる恐れも少なくなります。
これに顧客が自ら積極的に発信し、拡散してくれるような顧客の行動力でつながる関係性が加わることで、企業側が思いもよらないアイデアや気づきを与えてくれる可能性も高まります。
推しが自社の優秀な営業マンに?
自社の商品、サービス、代表者や社員など企業という共同体すべてに深い愛情をもって推してくれる人は、自社の社員とは違った視点を持つ、いわば第三者目線をも兼ね備えた営業マンと言ってもいいでしょう。
自社の商品やサービスのファンをさらに上のステージの推しに変えていくことが、ビジネス拡大の大きなカギになるのです。
顧客を自社のファンというステージから、自社を推してくれるステージへと連れてくることこそが、Z世代をはじめとするSNSを自由自在に操る世代をターゲットにした販売戦略のキーポイントになると言えます。