Z世代を意識したマーケティング戦略
Z世代とは
Z世代とは1990年代半ば~2000年代後半に生まれた世代を指します。
2023年現在で10代後半から20代後半の世代ということになりますが、Z世代は世界人口の約3割、おおよそ77億人にもなり、これからの消費を担う世代として注目されています。
今回は、そんなZ世代を意識したマーケティング戦略についてお話します。
Z世代が成長してきた時代背景
Z世代が生まれた1990年代後半はバブル崩壊後の景気低迷期で、いわゆる失われた20年(現在では失われた30年?)とも呼ばれる時代でした。
そんな90年代後半から2000年代後半までの主な出来事を振り返ってみましょう。
1995年 阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件
2000年 携帯電話契約台数が固定電話を抜く
2001年 アメリカ9.11同時多発テロ
2007年 初代iPhoneの発表
2008年 リーマンショック Facebook・Twitter日本でのサービス開始
2011年 東日本大震災
こうして時系列で見てみると、Z世代が物心つき始めた時期と、2007年iPhone発表、2008年のFacebook、Twitterのサービス開始のタイミングがほぼ重なることがわかります。
こうした時代背景の下で成長してきたZ世代は、どのような特徴があるのでしょうか。
Z世代の特徴
デジタルネイティブ
Z世代は生まれた時からインターネットが身近な環境で成長してきました。
情報の収集と活用、学校の勉強、映画やドラマ、音楽などを楽しんだり、買い物、友人などとのコミュニケーションツールとしてスマホやタブレット端末、PCを難なく使いこなしています。
ソーシャルネイティブ
コミュニケーション手段としてインターネットを使いこなすのは、Z世代の前の世代であるX世代(1960年代~1970年代生まれ)Y世代(1980年代~1990年代半ばまで)にも普通のことですが、Z世代はSNSの活用にも積極的です。
他者とのコミュニケーション手段や情報収集手段としてだけでなく、自己をアピールする発信手段としてもSNSを高度なレベルで使いこなしています。
多様性を重視している
日本のZ世代を対象とした自分自身の行動や考えについての意識調査※では、「多様性は大切だと思う」と答えた人が80.7%という結果になりました。
幼いころからインターネットに触れてきたことで、自分の周囲のコミュニティだけでなく、世界中の様々な課題や文化、価値観に触れる機会が多いこともあって、価値観や考え方は千差万別であり尊重されるべきとの意識が高いと言えます。
消費行動には慎重
Z世代はバブル崩壊後の景気低迷下で生まれ、リーマンショックや東日本大震災、最近のコロナ渦などによる社会不安を目の当たりにしていることもあり、未来に対して不確実性、不透明性を感じています。
消費行動も慎重で、インターネットの比較サイトやSNSを通じて信頼できる人やインフルエンサーの評価を確認するなどして、商品やサービスが自分にとって本当に必要かどうかを判断します。
Z世代の前の世代はどうだったのか?時代背景と価値観の変化
画一的な幸福モデルに乗りかかったX世代
1960年代半ばから1980年ごろまでに生まれたX世代は、ちょうどZ世代の親世代にあたりますが、高度経済成長期からバブル期に生まれ、物質的な豊かさに価値を置く傾向がありました。
X世代が20代だったころ、1990年代半ばごろまでは、偏差値の高い大学を出て、有名大企業に入社し、結婚してマイホームを購入してという画一的な幸福モデルが存在していました。
実際にこうした画一的な幸福モデルを体現したかのような、幸せそうな上司や先輩が職場にも身近に存在し、「オレもがんばれば10年後には。。」といった価値観が一般的なものであったのです。
しかし、その後の大手金融機関の経営破綻やリーマンショックなどを経て、X世代も画一的な幸福を体現することもできなくなります。
多様性を意識せざるを得ない時代を生きるY世代とZ世代
1980年代から1995年ごろまでに生まれ、ミレニアル世代とも呼ばれるY世代も、バブル期を経験していることもあり、物質的な豊かさを追求する画一的な幸福モデルを多少なりとも意識する傾向はあります。
しかし、阪神大震災や地下鉄サリン事件、アメリカ同時多発テロ、東日本大震災といった社会を震撼させる事件や天変地異を目の当たりにして、将来への不透明性、不確実性を強く感じざるを得なくなりました。
このような日本人の価値観を大きく変えさせた平成から令和にかけての時代背景は、Y世代、Z世代の価値観形成にも大きく影響しています。
自分だけの幸福の定義を試みるZ世代
画一化された幸福など存在しない、幸せの定義は人それぞれと考えるZ世代は、
他人が提示した幸福の定義を無条件に受け入れたりなどしません。
Z世代は自分にとっての幸福とは何であるのかを、SNSを駆使して情報収集しながら模索しています。
消費行動においても、SNSを通じてインフルエンサーや自分が関心を持ってウォッチしている他人の消費行動を疑似体験することで、自分にとって本当に必要なものなのかを慎重に検討しています。
YoutubeやInstagramなどのSNSを通じて、他者が提示する多様な幸福のカタチを疑似体験しながら、自分にとっての幸福の定義の構築を試みます。
この過程で、自身が深く共感できる幸福のカタチを見つけ、幸福の定義構築を完了すると、とことんのめりこむケースも多くみられます。
自分流の幸福の定義づけと推し活
例えば推し活です。
対象に深く関心を持って共感し、好きになると推しの対象をとことん応援したくなり、熱狂的なファンになるわけです。
推しの対象はアイドルやアーティスト、アスリートなどリアルの場で活躍している人物のみならず、二次元のアニメ、ゲームのキャラクターをはじめ、歴史上の人物や寺社仏閣、鉄道、動物など多岐に渡ります。
Z世代が推し活で獲得しようとしているのは、日々の暮らしを豊かにする楽しみ、ストレスを解消する癒し、仕事や勉強を頑張る理由付けとしてのモチベーションに加えて、共通の推しを持つ者同士の交流を通じた、リアルの場での他者とのつながりです。
Z世代の推し活をヒントにしたファンマーケティング
ファンマーケティングとは、お客様を自社が提供する商品・サービスを高評価してくれるだけでなく、企業やブランドそのものに深い共感と愛着を持ち、継続して購入してくれる状態にしていく一連の活動のことです。
一般的な顧客とファンの大きな違いは、単なる商品やサービスの利用者ではなく、商品やサービスを提供する企業やブランド全体の応援者であることです。
ファンは商品やサービスのみならず提供する企業やブランド、その背後にある世界観まで含めて心から愛して応援しています。
そのため、より安価で高品質な類似の商品やサービスが発売されたとしても、乗り換える可能性は低いのです。
ファンマーケティングを試みる企業は今や珍しくありませんが、Z世代が生まれ、成長してきた時代背景と、Z世代の幸福へのアプローチを踏まえたファンマーケティングを意識している企業は、まだ少ないようです。
自社の商品・サービスのPRやブランド戦略と世界観の発信にとどまらず、見込み顧客の幸福の定義構築の過程に伴走することで、一歩先を行くZ世代マーケティングにつながるでしょう。